「障害者自立支援法が導くもの」

2005年10月29日 緊急学習会まとめ
第一部 自立支援法について 講師 元衆議院議員 石毛えい子先生

・清水
弁護士の清水建夫です。本日はNPO法人障害児・者人権ネットワークと人にやさしい未来を考える会・働く障害者の弁護団の主催で行います。 前衆議院議員の石毛えい子先生に障害者自立支援法と憲法について,不公平な税制をただす会の事務局長の富山泰一先生に税金に関するお話を伺います。 まずネットワークの大槻さんに開会のあいさつをお願いします。
・大槻
障害者自立支援法は自立支援法ではなく,自殺支援法と言われていますが,まもなく成立しようとしてます。小泉総理の小泉劇場の観客のままでいてよいのでしょうか。私たち自身が国の主権者として,どう生活を守るか,ご一緒に学びましょう。
・清水
3時20分まで石毛先生より自立支援法と憲法「改正」についてお話を伺います。石毛先生は議員在職中は厚生労働委員会の委員でした。今回は残念ながら議席を失われてしまいましたが。

・石毛
自立支援法,わかりにくいとの声があります。できるだけ分かりやすくご説明しながら,今後福祉サービスがどうなるかについてと自立支援法ではなく自立阻害法とも言われますので,その理由についてお話します。また,レジメにはありませんが,憲法をめぐる問題についてもお話します。レジメと資料に沿ってお話します。
人権ネットワークの月例会報告の中に月例会でNHKのビデオを見たことが載っています。この中に京極氏と藤井氏の討論のポイントが記されていますので,これも参考にします。
京極さんの3障害が一緒になることは評価できる,という点について。これまで精神・身体・知的の3障害に福祉法が分かれており,支援費制度の下では身体、知的障害の方が給付を受け,経済能力に応じて負担をするという応能負担だったものが,自立支援法では精神障害も含め,3障害が対象になることは評価できるとしています。
自立支援法が成立すると,サービスと負担については自立支援法の適用になり,これを除いて,これまでのそれぞれの障害別の3法律はそのまま残ります。難病やリューマチなどの特定の疾患については3年経過後に再検討されることになっています。
障害について認定されあるいは手帳を持っている人が,三法が規定するサービスの利用者となります。役所に申請し,障害の認定を受けなければいけませんが,認定の仕方は今は医療モデルが中心です。生活するために何が不便で不自由か,何が必要かを考慮する社会モデルは考慮されていません。自立支援法でもこの考え方が維持されます。
藤井克徳さんの発言については,おっしゃるとおりだと思います。だが,このNHKの放映時期が早い時期に収録され,その時点での発言なので,本質的な内容にまで十分に踏み込んでいないように思います。
1割負担の記載からの内容は私の話と重なりますので,レジメに沿ってお話しします。

国会の審議経過
昨日(10月28日)の衆議院・厚生労働委員会で採決されました。民主,社会民主,共産が反対しました。31日(月)の本会議で反対討論が行われた後,可決,成立する見込みです。9月11日衆議院議員総選挙が行われ,21日に特別国会が招集されました。参議院先議で10月13日通過し,後ほど金(キム)さんからもお話がありますが,衆議院へ。参議院では23項目の附帯決議がなされました。これほど附帯決議が多い法律が,法律の体をなしているか,というふうに思いますが,それと300近い省令が出されることが予想されます。
自立支援法はこの特別国会の審議の前に,4月末衆議院で審議,7月参議院で審議,8月に参議院審議の途中で郵政法案審議中に国会が解散され,廃案になりましたから,今度で2度目の審議となりました。2度審議されているが,中味はほとんど変わっていないと思います。当初10月実施予定だった部分が,来年に延びた程度です。国会審議での,今回の法案審議の仕方は失敗だったと思います。議員にはよくわかる話なのですが,今の与・野党の数的な構成では,法案は当然通ってしまいます。座り込みやデモなど近年にないほどの障害当事者の皆さんの反対運動はありましたが,中味は本質的に何も変わりませんでした。
法案審議に何時間かけるかは国会を監視する上で重要なチェックポイントになります。大切な法案なら審議時間は40時間以上とって当然ですが,厚生労働委員会の審議の前に,サービス利用料に1割負担を一律に設けるなら,予算委員会でもっと検討すべきだったと思います。そうすればもう少し別の結末になったかもしれません。
この法律の重要なポイントの一つは利用料の原則1割負担です。負担の上限は在宅サービスで40200円です。定率負担で上限を決めたということです。1割負担でピンとくるものは介護保険ですね。介護保険の負担といっしょです。今後介護保険に統合するための「1割」なので与党多数の現在,この1割は絶対崩さない。これは財務省の至上命題です。介護保険との統合は時期尚早とされましたが,この1割は堅持されました。今の支援費制度は奨励補助で,国にお金があれば出すという性格のものだったが,自立支援法ではこれを義務補助としました。これを義務補助にするために利用者に1割負担をさせることで,厚生労働省と財務省の話し合いが行われた。結局,義務負担と一割負担が合致して自立支援法の骨組みをなすこととなりました。支援費制度は15年度からスタートしまして,措置から契約へという大きな転換となりました。ところが,思いの外サービスが使われ,国の予算不足を引き起こしました。昨年は補正予算で対応しましたが,今年からは義務補助になっています。

P4の下,障害保健福祉施策の改革のポイントの4.公平なサービス利用のための手続や基準の透明化,明確化
ここに,支援の必要度合いに応じてサービスが公平に利用できるよう,利用に関する手続や基準の透明化,明確化とありますが,理屈としては納得できるとしても,実態は厳しい状況になると思います。男女共同参画へのバックラッシュ,外国人の選挙権等を認めないという排外主義,福祉利用者への強い風当たりなどの時代が来るだろうと予測されます。
私は地域によって多少は格差があってもよいという考えです。公平ということで,一律に画一化するというのはいかがなものでしょうか。

資料6の下,支給決定,サービス利用のプロセス(全体像)
自立支援法のもとでは一次判定として障害程度を判定しますが,その項目はたしか102あります。試行段階で,ですが。介護給付の場合にはその後二次判定に移行します。市町村審議会の審議の結果障害程度区分の認定がなされ,サービス内容が決まります。しかし,必要なサービスが提供されるかどうか,障害程度区分6区分でカバーできるかどうか,疑問です。今後重度の方の在宅での暮らしをどう実現するか,まだ不透明です。私が審議に関わっていたときも,「これから実態を調べて考えていく」という言い訳ばかりでした。
東京で暮らしている人は他に比べればまずまずの日々が送れています。しかしテレビでも仙台のALSの患者さんの4時間の介護給付の例が放映されていましたが,本来24時間介護の必要な人と4時間の人を障害程度で区分してしまって,平均の介護時間にしてしまっては生きていけません。障害程度区分を決める権限は各市町村に属しています。しかし,不服申立は都道府県にすることになっています。これは措置制度の時と同じです。障害程度区分はヘルパーさんをどれくらい利用できるかにかかわってきます。

資料5頁,雇用と福祉のネットワークによる就労支援・総合的な自立支援システムの構築
今授産施設にいる人は障害程度区分の認定を受ける必要はないが,例えば,Aさんは一般就労への移行支援になるが,Bさんは今までと同じ就労継続支援にいわばなるというふうに,障害程度,種類,能力などが考慮され,能力別障害程度区分がされることになります。 訓練等給付の下で,自立したいと思ってもまだその段階にまで行っていない人に6ヶ月の訓練が設けられました。これまで障害者にはないシステムです。就労継続に該当しない人は地域生活支援事業に該当します。小規模作業所はどちらに該当するかまだわかりません。障害者の社会参加のための場ではなく,障害者同志が競争する場になってしまう可能性もあります。厚生労働省はモデルをつくり,検討したようですが。図の左上の黒いところ,介護給付の中は,居宅介護,重度訪問介護,行動援護,療養援護,生活介護,児童デイサービス,短期入所,重度障害者等包括支援,共同生活介護,施設入所支援と有ります。これを受けるには障害程度区分認定を受けなければいけません。
精神障害者に対する通院医療費は都民は現在0円ですが,精神障害者福祉法では5%の負担が原則です。今回の自立支援法では1割負担になります。
サービスも細分化されて,障害等級区分にマッチングされるようになります。就労支援施設で個別に対応するのではなく,グルーピングされるようになるのでしょうか。またグループホームについても,現状の共生の生活を続けるために,グループホームとケアホームに細分化することにならないように,妥協策も考えられてはいます。6ヶ月で訓練の目的が達成されないときは,そのまま同じ場所で訓練の継続ができるように,省令で決められると答えてはいました。省令が定められることになるが,なるべく雇用に移行させたいようだと感じます。障害者雇用(率)の改善がなくて,果たして実現できるでしょうか。

サービスの抑制と社会参加の排除
行動援護について考えてみます。支援費では障害の程度は問わないのですが,自立支援法では援護という言葉で,対象者は障害程度の重い人と決めています。重度の人は義務的補助で賄われますが,中度,軽度の人の行動支援は地域生活支援として市区町村の裁量に任せられます。各市区町村がどれだけの予算をとるかにかかっています。重度の人の訪問介護も同じです。いままでのサービスを分解してそのレベルを下げられる障害者には下げていこうとするものです。個別に外出して人と会うことの生活上の重要性等,厚生労働省は考慮していないようです。
授産施設はこれまでは定員に対しての給付支払いだったが,今後は働いた人に対する日払いに変わります。精神障害者の授産施設の場合は,来られない,その日に来ない人との関わりが大切なのに,来られない人に対しては支払われない。能力や成果だけでみるのではなく,関係も,それに対応することも大切なことですのに。

負担の強化
自立支援法では扶養義務の復活があります。今までは成人の障害者がサービスを受けても,負担は親などの家族には求めません。9頁の上の図を見てください。食費,光熱費は原則自己負担となります。生活保護世帯は負担額は0円です。低所得1とある区分は,市町村民税非課税世帯であって,世帯主及び世帯員のいずれも収入が80万円以下(障害者基礎年金2級相当)である世帯に属する者は上限15,000円の負担となります。同様に低所得2の上限は24,600円,さらに一般の人の上限は40,200円となります。この所得は基本的には本人と配偶者のものです。しかし,負担できないときは扶養義務者が負担する,とされています。例えば13万円の所得の人が40200円払うと9万円しか手許に残らない。それで生活できないときには生活保護減免を受けるのですが,両親同居で負担能力があるなら両親の負担となります。ただ,両親の所得のうちから障害をもつお子さんについて扶養控除を受けている場合は支払い義務があり,扶養になっていない場合は支払わなくてもよい,という選択ということも新しく考えられています。得な方を選べばよいわけですが,面倒だから払ってしまえということになるかもしれません。
生活保護世帯で負担の減免を求める場合には,預貯金通帳を提出したり,扶養義務証明を出したりする必要が出てきます。長い歴史の成果として扶養義務をはずしたのに,財務省等の払わせたいという方針から同居の親族の支払い義務になってくる。ラベリングにもつながることです。  介護保険の問題点が自立支援法ではっきりとしてきました。高齢者が保険料や利用料を払ってサービスを受けるということが所得を世帯単位で把握するために,場合によって娘・息子などの世帯が合算されます。介護保険は都市部では一人暮らしの高齢者が多く,自立しているように思われている。しかし,所得が低い場合には世帯単位にされるという,介護保険での議論の乏しさが今はっきりとしてきました。障害者自立支援法の成立は,障害者も高齢者も「自立」を考えるよいきっかけになったと思いますが,扶養義務者の問題を十分には詰め切れませんでした。

所得保障
レジメの三の2の所得保障についてですが,障害者が最低賃金を受けても,賃金補填の問題を含めて,生活保護基準の所得が保障されるということなのかどうか,所得保障についての考え方は不明です。

能力観
レジメ三の問われなかったものの1にある能力観についてですが,一人が仕上げる仕事と何人かで仕上げる仕事等,仕事のやり方にもいろいろあります。そこで障害者がどのように働いてゆくか,その多様性を大切にしたいと思います。就労移行支援を見ると,人の能力や働き方を一面的にしか見ていないように思えます。仕事には人との関係が非常に大きく影響します。

地域について
レジメ三の3の地域についてですが,精神障害者の方のグループホームをどんな場所に建てるのかという質問に対して,病院の敷地内でよい,と考えている人もいます。しかしそれは本当の地域と言えるものではありません。

当事者主体と共生
レジメ三の4の当事者主体と共生についてですが,自立支援法は当事者主体の考えと益々乖離していくようです。この法律の運用は市区町村の役所にかかっています。たとえば,介護保険では,「庭の草取りはしてもらえないのか?」とか,「家族の洗濯はしてもらえないの?」とか厚生労働省にまで聞かれています。勿論対象外ですが,本来は現場の人が柔軟に考えればよいことです。役所がしっかりしていて,障害者が本当に求めるものの把握ができれば,障害者の要請も容れられます。しかしこれはあくまでもそうありたい原則で,役所の人はどうしても審査会や厚生労働省に判断を求めたがります。役所はどうしても客観的物差しを求めたがります。自立支援法の運用では,国に明確なルールを決めて欲しいと役所側は言っています。しかし,地方自治体にがんばってもらわなければと思います。ルールは当事者と役所が決めなければいけないと思います。
三年運用して,見直しになります。当事者や支援者の意見をそれまでにまとめて改正をを求める必要があります。

憲法問題について
今朝の新聞に自民党の憲法改正案が載っていました。9条2項で自衛軍の存在を認め,軍事裁判所を設けるともありました。軍事裁判所ができたら,軍の規律で動く事になり,独自の行動規範ができあがってしまいます。民主党も来年改正案を明らかにすると思いますが,9条の扱いが問題になると思います。報道によると制約された自衛権になるとのことですが。自衛権の解釈は民主党の国会議員の間で多様です。集団的自衛権と言っている人もいますが,来年までにどのようにまとめるか,9条2項を変える方向に進んでいるようです。

国民投票法
国民投票法についても議論が始まりました。民主党は18歳以上に投票権を持たせ,メディア規制はしない,条文毎の投票にすると言っています。自民党とは違うと。9条問題は非常に大切ですが,憲法改正の議論の狭間で自立支援法を通したり,税制「改革」がそのまま通ったりします。負け組が小泉改革で増えましたが,その人達が反自民になる訳ではありません。社会構造がリストラに向かっていることを注意しないと,理性が働かなくなります。政治もいい方向に向かわなくなります。与野党の論争も上滑りなものになるのではないかと危惧しています。憲法も大事ですが,すべてにわたって議論を重ね,行動を起こすことが必要ではないかと考えます。
もう一つだけ付け加えさせてください。ショックだったことがあります。ある会の勉強会で,経済同友会のトップが,フリーターを容認する発言をしました。フリーターより正規社員を,と皆さんは安定したところで仕事がしたいとお考えでしょう。私もそうです。ですからすごくショックでした。
今の社会,守りたいのに守れないことがたくさんありますが,しっかり考えていきましょう。

・清水
石毛先生のお話に関連して何人かの方に話していただきます。金さん,斉藤さん,大沢さんにお願いします。他に発言希望の方がいらっしゃいましたら,おっしゃってください。その後富山先生のお話をお願いします。

DPI
・金
今日のプログラムでは初めに発言予定でしたが,道に迷って遅刻しました。すみません。
まず、特別国会での,厚生労働委員会採決までの動きについてお話しします。私たちは参議院先議で始まった障害者自立支援法の動きに対して,法案修正は無理であろうということで,政令や省令に委ねている事項が200を越えていて多すぎて中身もはっきりしないので,この法案審議は本来ならまともにできないはずです。先の通常国会では踏み込んだ議論がされなかった。我々当事者にとってはこの法案審議と採択は、あくまでも序盤戦であり,政令,省令に当事者の考えをどう入れ込むかが重要と考え,付帯決議をとろうとがんばりました。具体的な運用にかかわる政令・省令の検討内容を監視し,その検討に当事者の意見を反映させるのが本番の戦いと考えています。附帯決議は、参議院で23項目くらいはいいりました。これはこちらでたたき台をつくって、民主党の担当委員を通じてできる範囲で入れてもらったものです。附帯決議の22項目には、市町村の相談支援体制に関する内容がはいったのですが,相談支援体制については在宅介護支援センターを活用するという内容になってしまいました。これは、障害者プラン(1995年)が示した地域移行を進めるための社会資源づくりとして位置づけられた、市町村生活支援事業や障害児・者療育支援事業、精神障害者生活支援事業をさらに定着、拡大させていくことが必要なのに、介護保険制度で機能している在宅介護支援センターだけが突然出てくるのは、まったく異様な話です。
衆議院では附帯決議をとらないということになりましたが、厚生労働理事会に対して、政令・省令の検討状況については社会保障審議会の障害者部会で検討したものを報告し,厚生労働委員会でチェックすることが委員長発言としてありました。こうした枠の中で、当事者の考えや要望を反映させる道筋をいろいろな方法によってつけることが大切です。
応益負担について言えば,一般世帯に属するのは7割になる見込みです。家族と同居している場合には、40,200円の負担になります。家族から利用をやめろと言われるケースが出てくることが予想されます。また、障害程度区分いついては、二次判定までが義務的経費になります。二次判定では、市町村審査会が一次判定で自動的にでてきた結果と、医師の意見書と認定調査員が利用者から聞き取りをして記入する特記事項を合わせて検討することになります。二次判定の審査では、利用者の意向と現在のサービスの利用状況に関する資料が添付されて、利用者の希望があれば直接意見を聞くことにしていくことが必要です。こうしたことを考慮した二次判定をするようにしないと,実態に即したものにはなりません。また,自立支援法の目的に「社会参加の支援」が入っておらず,あいまいな「社会生活を営む」となっています。移動支援事業も自治体の裁量経費によって財源確保がどれだけできるかによってまったく変わってきます。ここまで進んできた自立支援の積み重ねが逆行する内容が多くなるように思います。移動が介護給付の義務的経費に入らなかったので,自立と社会参加を後退、阻害することになるのではないかと思います。3年後には介護保険との統合を視野にいれていることは確かです。いまから、さまざまな地域の現場の問題を利用者と一緒に監視しながら、3年後に備えていくために皆さんと連携していきたいと考えています。

コミュニティサポート研究所
・齋藤
1986年日本初の自立生活センター作りに関わりました。以来、障害者が自ら作り出し、それを制度化するよう役人に求めていくモデルづくりを行ってきました。
医者は障害を悪いものと見て病気の有無のように判定できると考えますが、実際には「残された機能が発達して障害をカバーするとか、人間的に練れて幅ができる」など、障害がもたらすものは一様ではないので、障害程度で障害者の生活を輪切りしても、適切・公平なサービス提供は期待できません。
社会サービスの提供に当たっては、当事者が地域でどのように暮らしたいと考えているかが最も重要な要素で、障害を持って地域で暮らしたこともない医師・専門家に彼らの生活を推測せよといっても難しいと思います。どのくらいの社会参加を本人が望むかによってもサービスが大きく異なり、当事者の意思を無視したアプリオリな判定はサービスの不足と無駄を招くであろうと今から推定されます。
また「三障害統合」という言葉が金科玉条のように繰り返されていますが、それぞれの障害の最も進んでいるレベルに他の障害を追いつかせる、という発想が無く、障害者がこれまで長い年月をかけて勝ち取ってきたものを「統合」の名の下に奪うのではないかと懸念されます。「三障害統合」は予算も人手もかかるプロセスで、その準備をしないまま「統合」すると言い募ることは単なるリップサービスとしか思えません。
行政の言う「自立」の概念は貧困で、一般企業への就労のみを目指しているようなところがあります。しかしカナダのオンタリオ州では、体の調子に波があるため職場の同僚からの理解が得にくい精神障害者については、仲間が集まって「起業」できるように様々な補助金を出していて、「社会的入院の費用より税金の賢い使い方である」と、一般市民の理解も得ています。障害の無い人には100人いれば百通りの生き方があるように、障害があっても政府の指図に服することなく、自己決定に基づく個性的な生き方があっていいのではないでしょうか。消費税が導入されてから税金を負担していない市民はいません。だのに障害者は税金を消費するだけの存在のようにメディアを使って宣伝し、不平等感を煽って障害者へのサービスを削ろうとする「自立支援法」の馬脚をしっかり見据えて、不条理なことは許さないよう働きかけていく必要があるでしょう。

・熊谷Sさん
授産施設では通所した人のみの人数分の日払いになると聞きましたが
・石毛
通所した人数分が払われる。政令・省令で決められるから,要求していったらどうか。