障害児・者の人権の確率をめざします。 法律や制度は十分機能しているでしょうか。
明るく安心して豊かに暮らせるために何が必要でしょうか。 みんなで考えましょう。

国連障害者権利委員会の日本政府に対する総括所見(勧告)を受けての声明文(令和4年11月11日)

2006年12月国連総会で障害者権利条約が採択、2008年6月3日に発効されました。日本は国内法が条約の求める水準に達していないとの理由で、国内法の整備を優先させ、2013年12月4日の参議院本会議で障害者権利条約の批准が承認され、2014年1月20日批准書を国連に寄託し、141番目の締約国になりました。

国内法整備として、障害者政策委員会及びその下に設置された部会の意見に基づき、2011年には障害者基本法が改正され、2012年には総合支援法が、2013年には差別解消法が制定されたほか、労働政策審議会障害者雇用分科会の意見を受けて雇用促進法が改正されました。

条約は憲法よりは下位ですが、その他の国内法律よりは上位に位置するものです。ですから、整備された国内法は障害者権利条約の内容を踏襲したものでなければいけないはずです。しかし、障害者権利条約が求める水準に達していない法制度となっています。

条約批准が遅れたのは国内法整備のためですが、その国内法も不備の多い法律のままとなっています。

現状、コロナ禍、円安、物価高の状況も加わり、障害を持つ人のみならず、高齢者、子供たちにも生きにくい時代となっています。そのようなか、条約締約国に対する国連の障害者権利委員会による条約の実施状況についての審査が本年8月22日と23日の二日間にわたって行われました。審査の対象となったのは、国の報告書のほかに障害者団体、市民団体が出した報告書もその対象となりました。

その審査の結果、障害者権利委員会より、かなり広範な部分について勧告や要望が出されました。

特に、平等と非差別の条項で、

  • 障害者差別解消法を見直し、あらゆる状態を理由とした差別、合理的配慮の否定を含め、条約に基づく差別を禁止すること
  • すべての障害者に対し、合理的配慮が提供されることを確保するために必要な措置を講ずること
  • 障害に基づく差別の被害者のために、包括的な救済、および加害者に対する制裁を提供すること

教育について

  • 分離された特別な教育をやめる目的で、すべての障害ある生徒が、あらゆるレベルの教育において合理的配慮と個別の支援を受けられるよう、質の高いインクルーシブ教育に関する国家行動計画を策定する
  • すべての障害児の普通学校への通学を保障する

などを指摘しています。

これら勧告や要望にかかわる事柄は、この国に暮らす障害を持つ人すべてが感じていたところで、わが意を得たりの感があります。

それでは何を肝心なことと考えるかというと、私たちは、統合教育こそが差別をなくすための最も有効な施策との考えに行きつきます。生まれてから成人になるまで当たり前に、障害を持つ人と共に学び、助け合う。統合教育の中でこそ、障害を持つ人が単なる支援の対象ではなく、障害を持つ人が健常の人を助ける場面が当然に出てくることを学ぶ。そこには優しさや思いやりの心が自然に育つ環境がうまれるのです。そしてこれこそが必要不可欠です。

国連人権委員会の勧告、要望を契機として、差別のない社会づくりへの取り組みが加速することを切に願い、差別のない社会の実現のために、日々の生活の中で、一人一人が小さな努力を積み重ねることを自らに課し、政府、自治体との協力のもと、笑顔のあふれる国造りに邁進することを望み,誓います。

NPO法人障害児・者人権ネットワーク

声明文(2019年6月20日)

2019年5月28日仙台地裁で旧優生保護法を違憲とする強制不妊訴訟の判決が言渡された。中島基至裁判長は法律が憲法に違反していると認めつつも、手術から20年の除斥期間を経過し、損害賠償請求権が消滅したと判断し、原告側の請求を認めなかった。

判決はリプロダクティブ・ライツ(性と生殖に関する権利)は幸福追求権(憲法13条)によって保障されていると判断し、原告らは不妊手術を強制され幸福追求権を一方的に侵害された。この権利侵害の程度は極めて甚大であると指摘し、強制不妊に関する旧法の規定は違法・無効だと指摘した。

そして、強制不妊手術を受けてから20年が経過すると損害賠償請求権を行使することができなくなる除斥期間到来前に損害倍を求めることは現実的に困難であり、救済のための立法措置が必要不可欠である旨判断したにもかかわらず、立法措置は国会の裁量に委ねられることを理由に原告の請求を退けた。

旧優生保護法は1948年から1996年まで50年近く「不良な子孫の出生を防止する」目的のもと施行されてきた。この法律によりおよそ25,000人の知的障がい者が本人の同意の有無にかかわらず不妊手術の対象となった。

国の優生思想によって不当に権利を侵害されてきた原告らに対し、国は本年4月国会で被害者らに一律に320万円を支払うことを救済の柱とした法律を成立させたが、わずか320万円の支給のみで、国の責任も明記されない法律によって解決するのみだとしたら、喜びをもってこの世に誕生するはずであった尊いまだ見ぬ命を抹殺した親としての後悔や絶望感をもって何十年も生活せざるを得なかった原告らを慰謝するにはあまりに低額にすぎる。

障がいのある人も合理的配慮の下で平等に幸福になる権利を認める障害者権利条約を批准したわが国は、過去の誤った法律が障がい者の権利を侵害してきた事実を率直に認め、被害者への謝罪をするべきである。

また国は判決が認定したリプロダクティブ・ライツを旧優生保護法が侵害し、違法であったことを真摯に受け止め、納得のいく救済策を早急に講じることを求める。

2019年6月20日
NPO法人障害児・者人権ネットワーク

相模原知的障がい施設事件声明文

平成28年7月29日 障害をもちながらも精一杯生きています 障害児・者人権ネットワーク理事長 粟谷 弘海

7月27日、衝撃的なニュースが流れてきました。

神奈川県相模原市の知的障害者福祉施設「津久井やまゆり園」で、27日未明に突然侵入した男により、施設利用者19名が刺殺され、職員を含む26名が重軽傷を負いました。犯人はこの施設の元職員だったことが大きな驚きでした。

犯人は、障がい者を標的にした犯行を行い「障害者は死んだ方がいい」「安楽死させるべきだ」など障害者の人権を蹂躙するような発言をしていると報道されています。これは、障がい者に対する差別である以上に、障がいをもって生きている人の存在そのものを否定するものです。

「生きるに値しない人間などいない」と強く思います。障がいをもつ人は自ら好んで障がい者になったわけではありません。障がいをもちながら精一杯生きています。

今回の事件は障がいをもってなお懸命に生きている者の尊厳と権利を著しく害するもので、到底許せる行いではありません。

今、日本でも障がい者差別の根絶に向けた条約や法律が徐々に整備されつつありますが、障がい者や高齢者などの弱者が暮らしやすい環境が整うことを心より願います。

もとより、障がい者に対する理解を深めるための教育を幼児期からすすめ、他者に対するやさしさや尊厳の心を持ち続けるための教育を行うことの大切さを切実に感じます。

私たち障害児・者人権ネットワークは、事件の原因を早急に究明し、二度とこのような惨事がおきないよう、万全の対策を講ずるよう、施設管理者、行政、監督官庁に求めます。

障がい児・者人権ネットワークは障がいをもつ人の生活環境がよりよく保てるよう今後も地道な努力を続ける所存です。

ネットワーク所在地変更のおしらせ

2018年4月1日に銀座6丁目から京橋2丁目にネットワークの所在地を移転しました。
今後のご連絡は下記までお願いいたします。
東京駅八重洲中央口から徒歩10分のところです。京橋はオフィス街で落ち着いた佇まいです。

〒104-0031
東京都中央区京橋2-5-22 キムラヤビル8階(中央通り法律事務所内)
電話03(6263)2958

事務局・お問い合わせ

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