2015年4月11日 公開学習会 障害のある人の労働 報告

於 京橋プラザ区民館 洋室2号室

理事長より,本日の学習会は「障害のある人の労働」についてであること,その中でもテーマを直前に提案のあった

  1. 障害のある労働者の非正規雇用の問題
  2. 成年後見制度利用と雇用
    (被後見人でないことの宣誓書の提出を雇用契約時に求められた)
  3. 会社に対して障害のあることを告知すべきか(精神障害のある人が告知したら雇い止  めになった相談があった)

について話し合うことの確認がなされた。

早田弁護士より,改正労働契約法の18条(無期労働契約への転換),19条(雇い止め法理の法定化),20条(不合理な労働条件の禁止)の3条について条文解説を受けた。18条 無期転換ルール
2013年4月1日以降有期労働契約が反復更新され5年を超えた時は,労働者の申 しいれによって無期労働契約に転換する。
注)この「5年」は,2013年4月1日以降の契約締結,契約更新の時から数え    はじめる。それ以前はカウントされない。

19条 雇い止め法理の法定化
解雇権の濫用を認めない最高裁判例により雇い止め法理が確立していて,労働者から 更新申し込みがあった時,一定の場合に使用者による解雇が認められない。
一定の場合
・有期労働契約が過去に反復継続されており,無期労働契約の雇い止めと社会通念上同視できると認められる場合
・有期契約満了時にその契約が当然更新されると期待する理由があること 20条 不合理な労働条件の禁止
期間の定めがあることにより,期間の定めのない労働者と労働条件に相違がない前提 で,相違がある場合には合理的な事情がなければならない。

①について
清水弁護士より雇用促進法の改正について解説があった。
第1条(目的)
雇用促進法の適用は身体障害者又は知的障害者の雇用義務となっていたが,障害者となり,発達障がいを含む精神障害をもつ人も対象となった。雇用の分野において障害のある人とない人が均等な機会や待遇を確保され,障害をもつひとが能力を有効に発揮できるための措置を講ずることが規定された。
第2条(用語の意義)
障害者のなかに身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害が含まれるようになった。
第二章の2 障害者に対する差別の禁止等
障害者に対する障害を理由とする差別の禁止。雇用のあらゆる局面において差別の禁止
第34条 募集・採用時において障害者に対して障害のない人と均等な機会をあたえなければならない。
第35条 賃金や教育訓練の実施その他の待遇について障害者であることを理由に不等な差別的扱いをしてはならない。
第36条の1 厚生労働大臣は雇用の分野において,事業主が適切に対処するための指針を定める。
「雇用の分野に於ける障害者と障害者でない者との均等な機会の確保に関する指  針」
障害者差別や合理的配慮義務についての詳細は指針に定められる。
第36条の2 事業主は障害者の申出により,合理的配慮の提供を行わなければならない。
第36条の3 事業主は障害をもつ労働者が能力を有効に発揮できるよう支障となっている事情を改善するため施設の整備等必要名措置を講じなければならない。
等々
第38条(雇用に関する地方公共団体の義務)
第43条(雇用に関する事業主の義務)
身体障害者又は知的障害者の雇用とされていたものが,精神障害者も雇用率にカウントされることになった。
第74条の4(苦情処理・紛争解決援助)
事業主に対し,労働者から苦情申し出を受けた時に,自主解決を図る努力義務を明文化した。

健常者の非正規と障がいのある人の非正規では全くちがう。労働契約法の改正があって有期労働が5年以上になれば労働者の申し入れによって無期労働契約に転換されると言う条文も障害をもった人が同様に事業主に求められるかと言うとそうではない。非正規雇用の問題を行動を起こすことによって世の中に訴えた方がよい。
障害をもつ労働者の非正規雇用の実態調査の公表を求める厚労省交渉を行う提案があった。(厚労省の予定もあるが)

5月15日の新プロジェクト(障害者権利条約,障害者差別解消法,労働に関する事例検討など)の際に,働く障がい者ユニオンと障害児・者人権ネットワーク合同で,総会前日の5月22日(金)午後3時30分~厚労省へ申し入れを行う。
国会議員の伝手がないか。
記者会見した方がよい。
申し入れの内容は15日のプロジェクトでつめるが,

① 障がい者の雇用形態の実態調査の有無と調査している場合の結果の公表
② 障がい者の雇用を非正規から正規雇用にする

を内容とする予定。

②について
古野
自閉症協会で会社勤務に先立ち,被成年後見人でないことの誓約書を提出することを求められた人がいて,成年後見人をつけたり,破産申立をした人は働けないということになってしまう。これは差別です。

<学習会資料>
・障害者の雇用の促進等に関する法律
・同法律新旧対照表
・障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の概要
・労働契約法
・厚生労働省 改正労働契約法のポイント
・有期労働契約の締結・更新及び雇止めに関する基準について(厚生労働省・労働局)
・労働契約法の改正と有期雇用をめぐる実務(第二東京弁護士会発行)
・障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(差別解消法)
・差別解消法の概要
・日本労働弁護団からのお知らせ
取り戻そう 生活時間と安定雇用-許すな雇用破壊-5・14ACTION

<感想>
学習会に参加して
働いている時は医療系だったので,医療に関する法律を否応なく頭にいれておかなければいけなかったのですが,仕事を辞めてからは法律の条文に接する機会がありませんでした。
労働に関する法律,障害をもつ人の雇用に関する法律は初めてふれたもので,睡っていた脳がだいぶ刺激され,知恵熱が出ないか心配なくらいでした。
私の勤務先は労働環境としては恵まれていたことを改めて感じました。
世の中の流れを知ること,社会的に弱い立場の人の環境を底上げすることで,日本全体がもっと豊かになるはず,と感じました。
(学習会参加者)