第5回裁判学習プロジェクト(2015.10.9)

開催日 27年10月9日(金)午後6時~8時
出席者 8名

障害者雇用助成金をあてにした会社設立
助成金目当ての障害者雇用はなくならないのか。
未払賃金立替払い制度
立替払い制度の要件をみたすには

エンタメストア事件-東京地裁申立の破産事件

2010年はじめ頃、テレビ番組のグッズなどの販売をする会社を京都に出店するため障害のある人42人が採用された。親会社は東京。

立地条件が悪かったためか、同年の11月には会社倒産。給料日前の25日に上司から従業員に解雇が告げられた。
12月8日会社が説明会が開催されたが、なぜ倒産したかの納得いく説明がなかった。

助成金目的の会社設立、計画倒産ではないかの疑惑がもたれ、12月17日に「エンタメ被害者の会」が結成された。
調査の結果、特例子会社助成金をあてにした会社設立で、助成金が入る12月まで会社が存続できなかったため倒産となったことがわかった。

弁護団は裁判所と管財人に障害をもつ人への次の配慮を要求

  • 債権届出期間の延長
  • 破産手続き資料の内容をわかりやすくし、ルビをふること
  • 債権者集会を京都で行うか同じ説明会を京都で行う
  • 債権者集会ではわかりやすい説明をし、手話通訳、要約筆記、バリアフリー、知的障害のためのガイドヘルプを要求

債権者集会は東京で開かれたが債権者説明会を京都で開催した。

未払賃金立替払制度が使えない

未払賃金立替払制度
企業倒産により賃金が支払われないまま退職した労働者に対して、未払賃金の一部を立替払いする制度

賃金の8割(年齢による上限あり)
退職日6ヵ月前から立替払い請求日の前日までに支払期日の来ている給与、退職金

制度の実施者

独立行政法人労働者健康福祉機構

立替払の要件

  • 会社が1年以上事業をおこなっていること。
  • 倒産したこと
  • 労働者が破産申立日の6ヵ月前から2年の間に退職した者であること

※会社が1年以上事業活動をおこなっていなかったため、立替払いの要件を欠き、未払賃金は立替払いの対象とならなかった。

元会社代表者の提案による和解

未払給与の9割程度が支払われる和解が成立
破産手続上の配当も給与の1割程度あった

説明会で、親会社の事業拡大の失敗もあり、両方潰れることになった。助成金目当てとまでは言えない。

裁判所、破産管財人の配慮

管財人が破産法の言葉の説明を文書にしたもの、拡大文字の文書、手話通訳の保障が された。

議論

泣き寝入りしないこと。熱心に活動してくれた弁護士さんがいたから一定の成果が得られた。

公務災害握りつぶし訴訟

校長が長年公務災害申請書をロッカーに放置した不作為の責任がみとめられた事件

原告:中学教員  被告:東京都

事件の概要

就職2年目の教師が1973年に頸肩上障害を発症し、軽減勤務と通院の必要有りの診断を受け、軽減勤務に配慮を示さなかった校長の療養妨害によって症状が悪化したことによる公務災害認定請求書を1992年提出しようとしたが、請求書を16年間ロッカーに放置した。公務災害の認定を受けないまま症状悪化に苦しんだことによる損害賠償請求と請求書の受理を求めた。

公務災害認定請求

根拠法:地方公務員災害補償法(第1条 目的)
この法律は、地方公務員等の公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡をいう。以下同じ。)又は通勤による災害に対する補償(以下「補償」という。)の迅速かつ公正な実施を確保するため、地方公共団体等に代わつて補償を行う基金の制度を設け、その行う事業に関して必要な事項を定めるとともに、その他地方公務員等の補償に関して必要な事項を定め、もつて地方公務員等及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。

請求書提出

校長→都教育委員会→地方公務員災害補償基金
所属部局長(校長)の証明を受け、任命権者(都教育委員会)を経由して提出

一審判決

校長は公務災害認定の判断を受ける期待権を侵害したとして50万円の慰謝料を基金と連帯して負うとした。

控訴新判決

期待権侵害、ロッカーに放置されたままであったことの不作為の義務違反を認め一審を維持して50万円の損害賠償支払いを命じた。
校長は公務災害認定請求手続きにおける被告基金の公権力行使の公務員とは言えないとして、被告基金の責任は否定した。

上告審

上告棄却
控訴新判決を維持

評価できる点

被告の消滅時効の主張に対し、裁判所は請求書放置の事実を不作為に当たると認定し、時効の主張は否定した。
所属部局長の証明なくして労災認定を受けることができることとなり、災害補償の手引きが改定された。