第2回裁判学習プロジェクト(2015.6.5 )

開催日:27年6月5日
出席者:7名
差別に関する裁判事例を検討した

重度障害児の生命の平等を問う事例-名古屋伊藤晃平君死亡事件

ショートステイ中の短期入所施設での転落死亡事故

当時15歳11ヵ月 重度知的障害

早朝起き上がった晃平君に気づきながら担当ヘルバーが直接制止を怠った。
施設側は過失を認めているが、重度知的障害者であり、就労可能性はないと逸失利益を 全面的に争った事件。

議論

  • 人の命は地球より重い 家族の喪失感、悲しみは計り知れない
  • 人間の生命の尊厳は平等
  • 副島弁護士は最低賃金を逸失利益の算定基礎にした事例があった
  • 西村弁護士は障害者年金を逸失利益の算定基礎として裁判を行った
  • 晃平君の発達可能性について発達障害児の言語療法の臨床に関わってきた人の意見書が効果的だった
  • 西原道雄氏論文は凄い!
    昭和40年 日本私法学会 学会誌27号107頁

結論

裁判で障害年金を基礎とした逸失利益770万を認めた。
和解条項中に「障害児の命を預かる立場にある者として求められる注意義務を欠いた 謝罪条項が入れられたことに大きな意味がある。

ネットカフェ入店拒否裁判

ネットカフェを利用していた40代男性 精神障害者で、手帳を店内に忘れたと思い、店に連絡したところ、次回からの入店を店 長より拒否された。
男性は15回ほど同店を利用していて、特に問題はなかった。

【店側の理由】
過去に別の障害者の無銭飲食があった。

店側に営業の自由を理由とした利用者の入店を拒否することが出来るか否かが争点。

議論

  • 障害手帳は持った方が良いか
  • 障害の程度が軽い場合、手帳を取得することで障害者 のレッテルを貼られ不利に生活上の不便はないか
  • 障害年金を受ける場合は必須
  • 手帳取得で有利になる場面が多い
  • 乙武さんの場合のように問題となる入店拒否は氷山の一角
  • 障害者であること以外の店側の理由がある場合、予約が入っている、満席など、確認のしようがない

結論

判決は入店拒否は障害を理由とする差別であると認定し、慰謝料を認めた。
障害を直接理由とした差別について裁判所が「違法」と判断したことは先例的意味をもつ。

スーパー銭湯入浴拒否事件

それまで車いすでの10回以上の入浴ができていたのに、2007年8月13日、以後の車いすでの浴室への入室を拒否された。

法務局は障害者基本法の趣旨に反するとして「説示」措置。
効果なしで提訴。
入湯拒否について銭湯側の説明義務の有無について争い。

議論

  • 車いすのままの入湯は安全上問題なら、銭湯側が銭湯使用車いすを準備したらいい
  • レジオネラ菌の付着を心配するなら、個々人がどのような病気をもって銭湯に来ているかの確認のしようがなく、片手落ちではないか

結論

一審、二審、告審ともに敗訴。
店側に入店拒否に関する説明を必要としないとの判決。
差別解消法の運用の在り方、各地での障害者差別禁止条例の制定が必要。