第1回裁判学習プロジェクト(2015.5.15)

第1回学習会が5月15日(金)午後6時~8時(場所 銀座通り法律事務所)で行われました。

呼びかけ人:理事長 粟谷弘海氏
参加者:8人

「裁判学習プロジェクト」

使用テキスト

生活書院 2014年12月14日発行
「障がい者差別よ、さようなら!」 障害と人権全国弁護士ネット 編

我が国が昨年1月20日障害者権利条約をようやく批准し、2月19日締約国となった。権利条約を批准したからといって条約が発効したからといって障害者差別がなくなるわけではない。差別をなくすためには、権利条約を学ぶとともに、障がい者差別の実態を知ることが必要。世の中に知らしめると言う意味では裁判に訴え、世の中の耳目を集めることが効果的。と言う基本的考えのもと、テキストをじっくり読み進め、意見交換していくことにしました。

1.差別の禁止

保護の対象から権利の対象へ
障害者権利条約批准のための国内法整備を進めた。法整備を進めるにあたって「Nothing about us、without us !」障害者の参画を重視した。

2.障害者権利条約の特徴

  1. 当事者参画
  2. 他の者との平等
    障がい者であることで、特別の権利を享受しない、他の人以下の扱いも受けない。
  3. モニタリング機能
    障害者権利条約を実施し、保護し、監視するための機関を設置する。

3.障害に関する基本的な考え方

*「医学モデル」→「社会モデル」へ

2011年障害者基本法改正による考え方を反映

* 障害者 とは

「身体障害、知的障害、精神障害(発達障がいを含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」

* 社会的障壁 とは

「障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のもの」
障害者の人権確保を困難にする障壁の除去

* インクルージョン

障害者を排除する社会から障害者を包摂する社会への転換により障害者の人権を確保する。

* 合理的配慮

権利の実現にあたり、障害をもつ人が社会参加の機会を奪われないように、可能なかぎり障害のない人と同等に労働や教育の機会を受けられるように配慮する。 議論・・・・・過度に事業主等に負担を強いる合理的配慮は要求できない。

4.条約批准のための制度改革の成果

*「障害を理由とする差別の快勝の推進に関する法律」(通称 差別解消法)の成立

2013年6月19日成立 障がい者基本法の差別の禁止を具体化したもの

内容: 差別の禁止
障害者が障害のない人と共に社会に参加するための機会を確保する目的
処罰規定、取締規定はない

対象: 差別禁止法の対象は「行政機関等」と「事業者」
地方自治体は含まれるが、国会や裁判所は含まない。事業を行わない個人も含まれない。

重要 障害を理由とする差別の禁止とは

◎ 不当な差別的取扱を行った場合
◎ 合理的配慮を提供しない場合

合理的配慮提供の例外

実施に伴う負担が加重である場合
→歯止めが必要 参議院の付帯決議

「その水準が本法の趣旨を不当にゆがめることのない合理的な範囲で設定されるべきであることを念頭に、事業者の事業規模、事業規模からみた負担の程度、事業者の財政状況、事務遂行に及ぼす影響等を総合的に考慮すること。」
→立証責任は事業者側にある

* 差別解消法の問題

  • 「不当な差別的取扱い」や「必要かつ合理的な配慮」の文言の定義規定がない。
  • 間接差別」「関連差別」の一律判断が困難
  • 雇用分野を除く事業者には合理的配慮が努力目標になっている
  • 障害者差別解消支援地域協議会の設置が可能だが、差別解消のための権限が与えられていない。
    差別解消法は条約の趣旨からすると不十分な法律。条約の完全実施のための新たな取り組みが必要。

5.名古屋伊藤晃平君死亡事件

障害者の命の重さ
人の命の価値を障害の有無により差別することへの批判
ショートステイ中の転落事故死 転落死の過失について争いがない。

施設側は最重度障害者で就労可能性がなく、逸失利益はないと主張。

原告は晃平君のかけがえのない人生を奪われたことを裁判所に訴えた。
言語療法の専門家が就労可能性について裏付けた。
障害年金を基礎とした3711万2207円の損害賠償義務を認めた和解。

6.ネットカフェ入店拒否事件

統合失調症の男性。ネットカフェ登録し、利用。障害者手帳を忘れたと思いカフェに連絡したところ、以後「障害者はお断り」と入店拒否された事件。
判決
入店拒否は公序良俗違反にあたる違法な差別で、不法行為にあたる。

7.スーパー銭湯入浴拒否事件

車いすのタイヤには「レジオネラ菌」等の細菌が付着しているので、不衛生である旨認定し、入浴拒否を正当化した。一審、二審敗訴。上告棄却。

8.性同一性障害の男性を父親と認めた最高裁決定

法律で性同一性障害の夫婦の婚姻を認めておきながら親子関係を否定するのは相当でないとした。

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総則部分を読みながら、各事例の解説を読む方法で進めていきます。是非ご参加ください。

テキストをお持ちでない方は、事務局までご連絡ください。早田弁護士から譲っていただけます。2600円です。
外務省発行「障害者権利条約」が簡易で分かり易いです。市区町村の窓口にも置いてあるとのことですので、問い合わせてみてください。(文責 小野清美)