第8回判例研究プロジェクト(2016.2.12) 

開催日 28年2月12日午後18時
出席者 10名

成年被後見人選挙権訴訟

この裁判の当事者は人権ネットワークの会員であるNさんのお嬢さんでTさんです。Nさんにお願いすると、遠方で、夜の集まりであるにもかかわらず、参加してくださいました。

【成年後見制度とは】
判断能力に乏しい、金銭管理ができない人を守るための制度

Tさんは20歳からずっと選挙に行っていた。投票日には必ず投票していた。
Nさんは親として、成年後見人がついて選挙に行けなくなっても特に問題にはならないと思っていた。

↓5年後

Tさんが選挙に行けなくなったことが心にひっかかっていることをはじめて知った。

↓杉浦ひとみ弁護士に相談

ほどなく「人権にかかわる問題です」といってくれた。
被後見人が選挙権を奪われることは選挙権の侵害であり、憲法違反である。

問題点

選挙権を能力によって制限するのは許されない。
成年被後見人と裁判所で判断されたことをもって、選挙人としての能力がないと判断することは許されない。

Nさんの裁判に続き、提訴 埼玉、京都、北陸でも提訴した。
総務省側には10名の弁護士がついた。
国側の主張は根拠に乏しい。
選挙権をもつには能力が必要で、その基準は国が決める。
能力が必要な理由については「他人に影響されて不正な投票をする危険性がある」という主張をしたが、実際どのような不利益が生じたかについては説明できなかった。

裁判所は「人権」に理解があった。

注目度が高かった。
手をつなぐ育成会が訴訟のさなか、公職選挙法の被後見人の選挙規定の撤廃を求めて署名を行った。41万人の署名。毎回裁判には法定に入りきれない程の傍聴人が集まった。

諸外国では後見制度により選挙権を一律に制限する法律は廃止、能力制限制限していない国もある。
被告国側は禁治産法を根拠にするなど、説得力のある確たる根拠がなかった。

結果

第1審 成年被後見人がすべて事理弁識能力を欠く状況にあり、常に事理弁識能力が無いということではない。能力を回復することがあるものを含んでおり、被後見人であることをもって選挙権の行使を認めないことは違憲である。
選挙権行使に能力が必要であることに合理性がある。

定塚誠裁判長の判決言い渡し後の語りかけ

「どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください。堂々と胸を張っていい人生を生きてください。」

2013年5月 判決後公職選挙法の制限規定を削除する動きと世論の盛り上がりにより、法改正が行われた。

国側は控訴

世論やマスコミの批判を受けながらも国側は控訴。原告側はすでに制限規定が削除されたことから裁判所た訴えの利益なしと判断することが予想されたため、国に対し和解の申し入れ。訴えの利益なしとして裁判が終了するよりも国に反省を促したい。選挙できる権利の存在を確認したい。

和解内容

投票できる権利の存在を確認し、訴訟を終結させる。

参加者の意見

  • よい結果がでてよかった。
  • やはり世論とマスコミ。いろんな人を巻き込んで大きなうねりにする必要がある。
  • 成年後見制度は個々人の状況に合わせてつかえばよい。後見が圧倒的に多いが補助、補佐などでもよい人も多いはず。
  • 後見制度支援信託制度もある。
  • 被後見人の選挙権については法改正が行われた。被選挙権についてはどうか。
  • Tさんは選挙に関して感心が高い。他の障害をもった人も選挙権を行使すべき。

後見制度支援信託の概要

親族後見人などによる財産の不正使用が起こることから、最高裁判所が中心となって、日本司法書士会連合会等の関係機関と協議を重ねた結果、平成24年から後見制度支援信託という制度が開始された。

後見制度支援信託は、本人が日常生活で使用する分を除いた金銭を、信託銀行等に信託することで、後見人による本人の財産の横領を防ぐ制度。これにより、信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするには、家庭裁判所の指示書が必要になり、後見人が勝手に払い戻しや解約をすることができなくなる。

安倍政権が目指す「同一労働、同一賃金」(弁護士 清水建夫)

労働者の職務に応じた待遇の確保等のための施策の推進に関する法律(同一労働同一賃金推進法)が昨年9月16日に成立した。
この法律は主に派遣労働者を対象としているが、雇用促進法にいう常時使用する労働者を非正規でよいと障害者雇用ガイドブックにあるので、障害者にも使える法律
。 法律制定は大きな意味がある。
法律は働く障害者にも追い風なので、厚労省に非正規雇用の実態を知らしめて、是正を求めていくことは大切。